明晰夢って意味あるの?

 こんにちは、沙耶です。自分が認識したものが全て現実だと考えれば、タイムリープはなんにも難しいことではありません。明晰夢自己暗示など認識を変える方法はいくらでもあるからです。しかし、そんなものはタイムリープではないと言う人もいるでしょう。そういう人を納得させるのは難しいですが、説明して理解してもらうことはできます。

心はどうやってできるの?

 心理現象を物理的に捉えてみましょう。そう、神経の信号です。ではその信号を作った要因は何でしょうか。その一つは五感からの刺激です。過去の経験現在の状態が行動を決めるということは想像に難くありません。しかし、それだけでしょうか?

 もし過去の経験や現在の状態だけから行動を決めるのであれば、なぜ産まれたばかりの赤ん坊は泣くのでしょうか。泣くことで呼吸ができるという利点はありますが、そのことを羊水の中にいた経験しかない赤ん坊が泣いて得する理由など知る余地もありません。生まれたあとに行動の要因がないのであれば、生まれる前の要因、つまり遺伝の要素があるはずです。

遺伝があるから進化する!

 遺伝とは、自然淘汰によって残った環境に適応した特徴が伝えられたものです。

 最初に生まれた動物は無性生殖、つまりオスとメスの違いはなく細胞分裂によって増殖していました。この方法でも増えることはできますが、突然変異でもなければ全員が同じ遺伝子です。つまり、その遺伝子が「暑さに弱い生物」という遺伝子であったとしたら、気候変動するだけで絶滅してしまいます。

 突然変異してオスとメスの違いができる個体が現れると、遺伝子が少しずつ変わってくるためちょっとの気候変動では動じず、絶滅せずに残り続けやすくなります。これが進化です。生き残りやすい特徴の遺伝子を持った生物が残るのです。人間の赤ん坊が生まれてすぐ泣くのは、生まれてすぐ泣かないような遺伝子を持つ人間が絶滅したからです。

 では遺伝と対を成すもう一つの要素、経験はどのようなメカニズムで環境に適応するのでしょうか。

パブロフの犬

 有名な実験にパブロフの犬というものがあります。犬に鈴の音を聞かせてから餌を与えるのを続けていくと、鈴の音を聞いただけで犬が唾液を出す、という実験です。鈴の音と餌は何も関係がありませんが、鈴の音がすると餌が出てくると信じてしまうのです。これを条件付けと言います。

 もちろん、食べ物が出てくると唾液を出すのは遺伝の要因です。唾液を出すと消化しやすくなるから、唾液を出さない遺伝子より残りやすいのです。この遺伝の要因に条件付けされることで鈴の音を聞くと唾液を出すという経験が要因の行動を起こします

生き残れるものが生き残る!

 遺伝要因は生き残るための要因が残っていて、経験要因は遺伝要因から派生しています。つまり、全ての行動は生き残るためのメカニズムであり、正確性は二の次です。

 例えば人間の目には、部分的に見えない位置があります。それを盲点と言います。人間はその位置が見えませんが、それをあたかも見えているように感じます。この感覚は正確な情報を受けているわけではありませんが、生き残るためには都合がいいのです。

世界五分前仮説

 人間の感覚は生き残るために都合よく処理されています。ここで物理現象の起こる世界を物理系、心理現象の起こる世界を心理系と呼ぶことにします。

 世界五分前仮説という思考実験があります。世界が五分前にできたとして、実際の世界と違うところはあるだろうか、という問題です。このとき物理系では五分前に世界が生まれていますが、五分以上前の記憶はあるので心理系においては138億年前から世界が存在しています。五分前に世界ができたと想像することはできますが、現実は138億年前から世界があると考えるでしょう。今の私達がそれを証明しています。

水槽の脳も同じです。水槽に入れられて幻覚を見せられていると想像することはできますが、やはり現実はそんなことないと考えます。物理系がどうなっていようと私達が現実だと考えるのは心理系です。

物理系って意味ないの?

 人間が現実だと考えるのが心理系だとしたら、人間が物理系だと思っているものは一体何なのでしょうか。

 物理学を含めた科学の理論には、本当に正しいものはいつどこで実験しても正しいという前提、再現性があります。つまり、複数の心理系の中で再現性のあるものを法則として、法則に矛盾しない世界を物理系とすればいいのです。今まで正しかったものがこれから正しくなくなる、ということもあり得ます。しかし再現性を前提として今まで科学が致命的な矛盾を抱えていないのです。

 例えば、人間は二人の親の間に生まれます。周りにいるどの人間にも父親と母親がいるから、それを再現性がある法則とします。すると自分の父親にも父親がいて、その人にも父親がいるということが直接見なくても認識できるようになります。科学も同じで、リンゴを含めた全てのものは地面に落ちるから、月だって落ちているのだろうという認識になります。再現性を前提にすることで心理系は物理系に近づいていくというのが科学なのでしょう。

哲学的ゾンビ

 この物理系は心理系に再現性を足すことで成り立つはずなのに、心理系が存在しないと仮定しても成り立ちます。科学の言葉で言うと、物理系は閉じているのです。それを説明したのが哲学的ゾンビです。

 このゾンビには心理系がありませんが、物理系では人間と全く同じように振る舞います。これまでの人間と同じ行動をするので、哲学的ゾンビと人間を物理的に見分ける方法がありません。これを全ての心理系に当てはめると、つまり全ての人間が哲学的ゾンビだったとしても物理系では何の問題もないのです。

卵が先か鶏が先か

 物理系が本当の世界で心理系なんてない、または物理系を処理したものと考えることができます。これが唯物論です。心理系が本当の世界で物理系なんてない、または心理系に再現性を足したものだと考えることもできます。これが唯心論です。

 結局はどちらが本質なのかという問題であり、それによって現象が変わるわけではありません。ただ話すときに相手が何を前提で話しているかを考慮しておかなければ話が噛み合わないことは念頭に置いて議論をすべきだと思っています。タイムリープと一言で言っても「こうやってタイムリープしたい」という思いは人それぞれですからね。

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