パラレルワールドってこんなもの

 こんにちは、沙耶です。タイムリープを考えると最初に問題になるのはタイムパラドックスです。過去に行って何かすると、未来が変わってしまうことですね。

 例えば、事故で大怪我をした人がいたとします。この人は事故を回避するために、事故の次の日から事故の直前の時間にタイムリープしました。この人は事故が起こることがわかっているので、その場を離れて事故を回避することができます。しかしそうすると次の日タイムリープする理由がなくなってしまいます。タイムリープしないと事故を回避できなくなり、やはり大怪我をしてしまいます。

 1度時間が巻き戻ったから巻き戻る前のことは関係ないという考え方もできます。しかし事故を回避するには事故が起こったときの記憶がないといけません。時間を巻き戻して事故がなくなってしまったのに、事故の記憶はどこで体験した記憶なのでしょうか。

 そんなパラドックスを解決するのがパラレルワールドです。「事故が起こり大怪我した」という世界Aと、「事故を回避した」世界Bが存在し、タイムリープすると世界Aの未来から世界Bの過去へ行くことになります。世界Aの未来でタイムリープしているので世界Bでタイムリープしなくとも事故を回避することができますし、事故の記憶は世界Aで経験したものだと説明できます。

 では、パラレルワールドは一体どのようにすれば存在を説明できるでしょうか。

量子論の多世界解釈

 物理学の世界では、パラレルワールドに似た概念があります。物理的な方法でタイムリープを目指すのであれば必要な概念になると思います。

 例えば、慣性の法則というものがあります。摩擦などの力がかからなければ、物体はずっと同じ速さで同じ方向に進んでいくという法則です。速さと方向が同じなので、ある時刻にどの位置にいるのかは進んでいる方向に「速度×時間」だけ離れた地点と計算することができます

 しかし、ミクロの世界では1つの地点を計算することができません。実は物体は波の性質があって、人間は波の高さに応じた存在確率で物体を見ることができます。これを「人間の意識が波を物体にした」と解釈することもできますが、パラレルワールドのように「複数の世界が重なって波ができていて、その中の一つしか観測できない」という解釈もできます。この解釈を多世界解釈と言います。

他世界解釈によれば、ミクロの世界で世界が分岐するとそれに干渉する物体や観測する人間も分岐し、ついには世界全体が分岐します。この解釈をすることで、人間が自然から生まれるというとても小さい確率で起こる現象を「奇跡的に起きた」ではなく「人間が生まれない世界が多いが、人間が生まれる世界もあり、それがこの世界である」と説明できるというメリットがあります。

論理学でもパラレルワールド!

 論理学の世界でもパラレルワールドに似た概念があります。

 例えば、「その人がこのサイトの管理人ならば、その人は沙耶の知り合いである」と言うように、「PならばQ」という形で文章を作ることができます。Pは「その人がこのサイトの管理人である」、Qは「その人は沙耶の知り合いである」に対応します。このサイトの管理人を全員集めて、全員が沙耶の知り合いであることを確認すると、「その人がこのサイトの管理人ならば、その人は沙耶の知り合いである」が正しいと言うことができますよね。つまり、「Pが正しい場合を全部調べると必ずQも正しい」ということを「PならばQ」と言います。

 このサイトの管理人は4人なので、4人とも沙耶の知り合いであれば正しいと言えます。もしサイトの管理人がいないときはどうすれば正しいと言えるでしょうか。もちろんサイトの管理人が0人なので0人に確認すれば(誰にも確認しなくても)正しいと言えます。このときのポイントは「PならばQ」のP、つまり「その人がサイトの管理人である」がいつでも間違っているということです。サイトの管理人はいないのだから、その人が誰であってもサイトの管理人であるはずがありません。

 「PならばQ」のPがいつでも間違っているとき、「PならばQ」という文章は確認するまでもなく論理的に正しいと言えるのです。「1=2ならば透明人間は存在する」という文章もP「1=2」が間違いなので文章全体は正しいのです。

可能世界論

 では、最初のタイムリープの例に戻りましょう。タイムリープする前に事故にあった人が「事故が起こらなければ大怪我をしなかった」と言ったとします。Pは「事故が起こらない」、Qは「大怪我をしなかった」ですね。さて、この文章は正しいでしょうか。

 もし事故の直後に大地震があってこの人が被害を受けたとしたら、この人は事故を回避しても大怪我をするはずです。しかしP「事故が起こらない」は実際には事故が起こっているので間違いになり、「もし事故が起こらなければ、大怪我をしなかった」が正しいことになってしまいます

 Pが正しいのにQが正しくない例を挙げると「PならばQ」が間違いだといえます。さっきの「事故が起こらなければ、大怪我をしなかった」の文章なら、事故が起こらず他の原因で大怪我をする例を挙げました。実際には事故は起こっているのに日常会話では事故が起こらない例を挙げられるのはなぜでしょうか。

 ここで登場するのが可能世界論です。確かにこの世界では事故が起こりましたが、事故が起こらなかった世界を考えることもできます。今いる世界とは別の世界のを含めて事故の起こらない世界を全て探し、全部の世界で大怪我をしなかった場合に「事故が起こらなければ、大怪我をしなかった」が正しいと言うことができます。今回は事故が起こらなくても、直後に地震が起きて大怪我をする世界を見つけてしまったので間違いということになりますね。

物理と論理のパラレルワールド

他世界解釈と可能世界論、二つのパラレルワールドの説明を見てみました。こうしてみると人間が生まれたというような小さい確率を説明したり実際には起こらなかった現象について話したりするときに、ほとんどの人はパラレルワールドを感覚的に理解できるように感じます。実はパラレルワールドとは科学が発展して初めて知り得たことではなく、今までずっとパラレルワールドがあることを前提にして生活していたような気さえします。

『パラレルワールドってこんなもの』へのコメント

  1. 名前: 投稿日:2017/12/17(日) 02:43:45 ID:aa2daccb3 返信

    「もし事故が起こらなければ、大怪我をしなかった」が正しいことになってしまいます

    これは正しいことになってしまいますじゃなくて間違っていることになってしまいますでは?

    • 名前:沙耶 投稿日:2017/12/17(日) 07:27:17 ID:8629cc38b 返信

      正しいことになってしまう、で合ってます。

      「事故が起こる」という前提が間違っている場合は「事故が起こらなければ怪我をしなかった」が正しくなりますよ、もしほかの理由で怪我する可能性があってもねって話です。

  2. 名前:デーモン隠れ侍 投稿日:2017/12/18(月) 00:41:06 ID:7f8b84b15 返信

    ん?分からんな。

    事故を回避しても結局怪我をするんだろう?

    であれば「もし事故が起こらなければ、大怪我をしなかった」は間違っているだろう。

    事故は起こらずとも結局は地震で怪我をするんだから。

    読解力なくてすまん。がこれについての説明を求む。

    • 名前:沙耶 投稿日:2017/12/18(月) 12:05:44 ID:4979c8dee 返信

      P(事故が起こらない)は真か偽のどちらかで、Q(怪我をしない)も真か偽のどちらかです。つまり、PとQの組み合わせは(真,真)、(真,偽)、(偽,真)、(偽,偽)の4通りです。「PならばQ」というのは「Pが真のときQも真」という意味なので、(真,偽)という組み合わせが存在しないということです。
      もしPが偽だと分かっているときは(真,偽)の組み合わせも存在しないので、「PならばQ」が正しいことになります。今回は実際に事故が起こっているのでPは偽です。だから「事故が起こらなければ怪我をしなかった」は正しいんです。
      もちろんこれは感覚的におかしいです。だから「実際にはPではないけど、もしもPだったら」という論理を扱うために可能世界論を使います。

  3. 名前:インフィニティ刃隠れ侍 投稿日:2017/12/18(月) 20:25:52 ID:7f8b84b15 返信

    はぁ〜なるほどね。可能世界論は説明するための方法みたいなものなのか。やっぱこういう質疑応答があるとめちゃくちゃ分かりやすくなるな(俺が)
    やっぱ哲学は面白いな。

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