時間に関するパラドックス?

 こんにちは、沙耶です。時間に関するパラドックスと聞けば、親殺しのパラドックスを想像すると思います。しかし、タイムトラベルやタイムリープの概念が生まれる前から、人類は時間について様々なことを考えてきました。今回はそんな議論の中から、ゼノンという古代ギリシャの哲人が考えたパラドックスを紹介したいと思います。

アキレスと亀

 ゼノンのパラドックスで最も有名なのはアキレスと亀です。は足が遅い動物の象徴です。ウサギとカメでもそうですね。一方のアキレスは足が速いことで有名なギリシャ神話の人物です。アキレス腱という名前はアキレスの弱点だということから名付けられました。

 さて、秒速10mで走るアキレスと秒速0.1mで走る亀が競走をします。ただし、亀はゴールまで1kmあり、アキレスは亀よりもさらに100m後ろからスタートします。それでも同じペースで走り続ければいつかはアキレスは亀を追い抜かすはずですが、本当でしょうか。

 まずアキレスは最初のハンデ100mを10秒で駆け抜けますが、その間に亀は1m進みます(アキレスは10秒100m進んだ)。次にこの1mをアキレスが0.1秒で進むと、亀はその間に1cm進んでいます(10.1秒101m進んだ)。この差をアキレスは0.001秒で埋めますが、それでも亀は0.1mm進んでいるのです(10.101秒101.01m進んだ)。

 これではアキレスは無限に亀に追いつけないどころか、スタートから11秒目を迎えることもできません。このことから、このパラドックスを考えたゼノンは「時間が存在するとしたら、無限に分割することはできないはずだ」と考えました。時間が途中で分割できなくなればアキレスが亀に追いつく瞬間に進むと考えたのです。

飛んでいる矢は止まっている?

 矢が秒速100mで飛んでいるとします。1秒経てば100m進みますし、0.1秒経てば10m進みます。では、0秒進んだら何m進むのでしょうか。距離=速度×時間なので、時間が0なら距離も0のはずです。しかしそれだと「どの瞬間を取っても矢は進んでいない」ということになります。

 アキレスと亀のパラドックスでは、「時間が存在するとしたら、無限に分割することはできないはずだ」という結論が出ました。つまり、時間には分割できない最小単位があるはずです。しかし飛んでいる矢はどの時間の最小単位を取っても進んでいません。実際には矢は飛んでいるはずなので、「時間が存在するならば」という仮定を否定しないといけません。ゼノンは「時間は存在しない」と言うのです。

種明かし

 実は現在の数学でこのパラドックスを解決することができます。アキレスと亀の議論を無限に続けるとすると、アキレスと亀は何m進んで、スタートから何秒立っているのでしょうか。ここでは中学生でもわかる方法で計算したいと思います。

 アキレスの進む距離は101.010101…です。これを100倍すると10101.0101…なので、100倍したものからもとの数を引いた距離は10000です。これはアキレスの進む距離の99倍なのでアキレスの進む距離は10000/99、つまり101と1/99です。亀でも同じことをすると、100/99、つまり1と1/99になります。その差はちょうど100なので、最初のハンデだけです。つまり無限に議論を続けたところでアキレスは亀に追いつくのです。

 ちなみにこのときの時間はスタートしてから10.10101…=1000/99秒、つまり10と10/99秒です。これより先はアキレスが亀を引き離す一方なので、同じ議論はできません。だからアキレスは亀に追いつけなかったのです。

 だからと言って時間は無限に分割できると断定する必要はありません。飛んでいる矢は止まっているという結論は速度の概念を無限に分割できるときの定義を使っているからおかしなことになってしまいました。無限に分割できるときは微分を使って速度を求めますが、分割できないときは差分というものを使います。この差分では時間の最小単位と最小単位の差を速度とするので、0秒間で進む距離を求めても速度はわかりません。

時間は連続的?離散的?

 数学では時間が連続的であっても離散的であっても特に問題がないことがわかりました。連続的というのは無限に分割できるということで、離散的とは時間に分割できない最小単位があるということです。では、物理学的にはどうでしょうか。

 量子力学には不確定性原理というものがあります。これによると、エネルギーを確定させようとするとすると時間が確定しなくなり、時間を確定させようとするとエネルギーが確定しなくなります。つまり、時間の最小単位を決めておくとエネルギーが不確定にならずに済みます。そういうわけで離散的に考えることもありますが、基本的には差分ではなく微分を使って速度を求める連続的な時間を考えます。どちらであっても物理法則は成り立つので、この問題を考えるためには物理学の外から考えなければいけません

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