多元宇宙論は物理学のパラレルワールド?

 こんにちは、沙耶です。過去の記事でパラレルワールドとして多世界解釈可能世界論を紹介し、それ以降の記事では可能世界論を採用することが多かったと思います。なぜかというと、多世界解釈はあくまでこの世界と同じ物理法則を持った別の世界しか存在せず、可能世界論は論理的矛盾(イチゴは植物であり植物でない、など)がなければ物理法則に関係なく存在するからです。しかし、物理学においてもこの世界とは別の物理法則を考える分野があります。それが多元宇宙論です。今回はそんな物理学的なパラレルワールドを紹介したいと思います。

 MITの理論物理学者であるマックス・テグマークの文献’’Parallel Universes‘’では、多元宇宙論を4つのレベルに分類しています。

Level1 regions beyond our cosmic horizon(宇宙の地平面の外側)

Level2 other post-inflation bubbles(拡張を終えた泡宇宙)

Level3 the many worlds of quantum physics(量子力学の多世界)

Level4 other mathematical structures(数学的構造)

 このうちLevel3の量子力学の多世界については過去の記事で紹介しました。なのでこの記事ではLevel1,2,4を紹介します。

Level1 宇宙にも地平線がある!

 望遠鏡で遠くの天体を観測すると、どの天体も地球から離れていきます。それは宇宙が膨張しているからなのですが、地球から離れる速さは地球からの距離に比例しています。これをハップルの法則と言います。

 ハップルの法則によれば、地球から離れていれば離れているほど速く離れるため、ある地点から先は光速を越えることになります。もちろん相対性理論では光速を越えることはありませんが、宇宙が膨張することによる見かけの速度は光速を越えるのです。この地球から離れる速さが光速になる半径をハップル距離と言います。地球からハップル距離以上離れている天体が放った光は地球には届かないため、地球からはハップル距離より先を観測することができません。なのでハップル距離を半径とした球面を宇宙の地平面と言います。また、宇宙の地平面の内側をハップル体積と言います。

 空間が無限に広がっているとすれば、地球からハップル距離以上離れた位置を基準にもうひとつのハップル体積を描くことができます。その位置からさらにハップル距離離れれば、と繰り返すことで無限にハップル体積を描くことができます。どのハップル体積も同じ宇宙に存在しているので物理法則は同じですが、そのほとんどは私たちのハップル体積とは物質の位置関係が違います。つまり、光速の壁を超えた先に同じ物理法則が支配する別の世界があるということです。

Level2 宇宙の外は別の宇宙?

 この宇宙が膨張して、その中に無数のハップル体積があることがわかりました。しかし、この広がる空間の外に同じ原理で生まれたもうひとつの宇宙がある可能性もあります。むしろ宇宙が生まれるような環境があるのにここだけが唯一無二の宇宙という方が難しいかもしれません。

 1981年に発表されたインフレーション理論では、次のように考えられています。そもそもビッグバンは「偽の真空」が「真の真空」に相転移することで発生したと考えられていて、この相転移は一点で起こります。一点は急激に膨張しますが、場所によって膨張するところとしないところがあり、泡のように複数の宇宙が発生します。このようにしてできる宇宙は大まかには私たちの宇宙と似た物理法則がありますが、物理定数(光速や万有引力定数など)が変わってくると考えられています。

 例えば光速が時速100kmだったらどうなるでしょうか。相対性理論によって光速を越えること新幹線どころか野球のピッチャーのボールも今より遅くなります。時空の歪みを簡単に感じられるので相対性理論がこの世界より早く発見されるかもしれません。地球の公転速度も遅くなり太陽が近くなるため、地球に生物が存在しないかもしれませんが。

Level4 数学でできることは全部できる!

 私たちの宇宙は4つの力で動いていると言われています。強い相互作用、弱い相互作用、電磁気力、重力です。この4つをひとつの式にまとめたものを万物の理論と言いますが、まだ発見されていません。しかしもしこれが発見されたとしたら、それは数式です。宇宙が無限に存在し、その1つ1つの万物の理論が数式で表されるなら、どんな数式もそれに対応する宇宙があるのではないか、と考えられます。

それがマックス・テグマークが提唱する究極集合仮説です。この仮説の優れている点は最も一般化されているということです。一般化とはより多くの事象を表すようにするということです。例えば「1から5までの合計は15」「1から10までの合計は55」「1から100までの合計は5050」などと具体例を挙げるよりも「1からnまでの合計はn(n+1)/2」と全ての場合をひっくるめて書く方が一般化されています。これと同じように、私たちの世界から初期状態を一般化したものがLevel1の宇宙、さらに物理定数を一般化するとLevel2の宇宙、そして物理法則そのものを一般化したものがLevel4の究極集合仮説です。

 究極集合仮説は可能世界論に似ているように感じます。可能世界論は論理的に可能である世界について考えますが、究極集合仮説は数学的に可能である世界について考えます。論理を式で表せることを考えると、まったく同じもののような気さえします。逆に引き寄せの法則の説明に量子力学の多世界解釈を使うのは根拠として弱いと思います。量子力学はあくまで同じ物理法則、同じ初期状態のもとで起こりうる多元宇宙なので、その領域外の現象について説明できなくなります

 これからの記事でもパラレルワールドは可能世界論に基いて考えるかもしれませんが、物理法則について考えなければならなくなったときは究極集合仮説を考えることになると思います。

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