ニュートンが考える時間ってどんなの?

 こんにちは、沙耶です。現在は相対性理論量子力学から生まれた理論物理学の研究がされていて、その中では時間の概念も私たちが日常的に使う概念とは変わってきています。そもそも時間という言葉は人間が自然を見たときに素朴に感じる時間の感覚を表したものなので、それが物理学で否定されても不思議ではないわけです。しかし力学を体系的にまとめたニュートンの時代では、相対性理論も量子力学もありません。その時代の物理学では研究者は時間をどんなものだと考えていたのでしょうか。今回は相対性理論以前の科学での時間について紹介したいと思います。

ユークリッド幾何学

 古代ギリシャの数学者ユークリッドは、原論という本に幾何学の体系をまとめました。ユークリッド幾何学は現代の小中高校で習う幾何学で、5つの公理(前提となるルール)から成り立っています。ここでは簡単に紹介します。

 

  1. どの2つの点も直線で結べる
  2. 直線は無限に延長できる
  3. 好きな点を中心にして好きな半径の円が書ける
  4. どの直角も等しい
  5. 平行線は交わらない

 わざわざ言われるまでもなく正しそうなことであることが分かります。現在ではこのルールに捕らわれない幾何学ができていて、特に「平行線は交わらない」を破った幾何学が有名です。しかしルールが破られたのは19世紀に入ってからで、それまではユークリッド幾何学を土台とした科学が発展し続けるのです。

デカルト座標系

 哲学者であり数学者でもあるデカルトは、我思う故に我ありという言葉で知られています。見えるもの感じるものは「本当は存在しないんじゃないか」と疑うことができます。しかし自分自身の存在を疑うことは、疑う本人が存在しなければできないことなので自分自身は存在するはずだというのです。デカルトの哲学は自分自身が存在するというところから始まります。

 数学においてデカルトの名前が登場する概念にデカルト座標があります。これはいわゆる直交座標のことです。例えば飛んでいるハエの位置を示したいときに、自分を基準に右にxメートル、前にyメートル、上にzメートルと言えば正確に伝えることができます。ここで重要なのはデカルトが17世紀の人物であり、まだユークリッド幾何学のルールは破られていないということです。つまり、デカルト座標はユークリッド幾何学で成り立つようにしかできていないのです。

ニュートンの絶対時間

 17世紀の錬金術師であり物理学者でもあるニュートンは、力学の体系を作ったことで知られています。このニュートン力学での時間の概念を見るために、まずはニュートンが力学をまとめたプリンキピアを見てみましょう。

Absolute, true, and mathematical time, of itself, and from its own nature, flows equably without relation to anything external, and by another name is called duration.

(絶対的で、真実で、数学的な時間というのは、時間そのものの性質から、外部とは関係なく等しく流れる。だからdurationとも呼ばれる。)

 楽しいときに時間の流れが早く感じたり、楽しみにしているときに時間の流れが遅く感じたりするかもしれません。しかしニュートンは本当の時間はどんなときも一様に流れると考えました。これが絶対時間です。ニュートンの時代でもユークリッド幾何学のルールは破られていないので、ユークリッド幾何学以外の幾何学は知られていません。そしてデカルト座標のx軸に時間を、y軸に空間を示したとき、ユークリッド幾何学に則れば時間は一様に流れる絶対時間になります。だからニュートンは絶対時間が数学的だと言ったのでしょう。

ガリレイの相対性原理

 ニュートン力学は絶対時間が使われていますが、絶対時間を使うには決めることが2つあります。基準単位です。例えば西暦はキリストの生まれた時刻が基準で単位は年です。ストップウォッチはボタンを押した時刻が基準で単位は分と秒です。ではニュートン力学では何を基準にして何を単位にすればよいのでしょうか。

 この問題に答えられるのがガリレイの相対性原理です。相対性原理とは誰が見ても同じ物理法則が成り立っているという原理で、基準をどこに取ってもニュートン力学が成り立つということです。ガリレオ・ガリレイはニュートンより前の時代の人なのでニュートン力学を前提にした原理ではありませんが、ニュートン力学ではこの相対性原理が成り立ちます。

 ガリレオが提唱したのは、速度Vで運動している人から見る位置x2と静止している人から見る位置x1には次の関係があるということです。

x2=x1-Vt

 要するに、速度×時間の分だけ位置がずれて見えるということです。普通に考えれば当たり前の話ですが、これもユークリッド幾何学のルールに基づいた話なのです。ちなみに、両辺をtで微分すると動いている物体の速度がどう見えるかが分かります。

v2=v1-V

 つまり、動いているものの速度は、見ている人が動いている速度の分だけ遅く見えるということです。同じ方向に走っている電車を見ているのを想像するとわかると思います。

非ユークリッド幾何学へ

 ニュートンの時代までユークリッド幾何学を基盤にして科学が発達してきました。しかし実は幾何学がユークリッド幾何学以外にも存在し、この世界はむしろそっちの幾何学に近いのではないか、と考えられるようになります。非ユークリッド幾何学が生まれた後の科学における時間の考え方は、別の記事で紹介しようと思います。

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